かがまるボイス

VOICE

北本修一さん・文江さん

生産農家(北本農場/能美市)

11月上旬、能美市吉原地区で「加賀丸いも」を栽培している北本農場を訪ねると、ちょうど収穫後の「ヒゲ取り」と呼ばれる作業の真っ最中でした。農場主の北本修一さん、妻の文江さんと共に、繁忙期に手伝ってもらっている近所の方も加わって、一つひとつ丁寧にヒゲ=根が切られ、出荷できる状態に仕上げられていました。

北本修一さん、文江さん夫妻

北本修一さん、文江さん夫妻。

加賀丸いも作りを始めてどのくらいですか?

修一さん:私の家は代々、米農家をしていて、父の代に減反政策が始まり「加賀丸いも」を作るようになりました。この辺りでは同じように減反政策を機に「加賀丸いも」を作り始める農家が徐々に増えていきました。

この芋は田んぼで米と輪作するので、米農家にとっては作りやすく、減反政策にも適した作物でもあったのです。父は米を中心に野菜も作っていて、私はサラリーマンをしながら田植えや稲刈りの時期に手伝っていました。平成10年に父の跡を継いで専業農家になり、平成13年には農業法人を設立して、その頃に「加賀丸いも」の栽培面積も増やしました。今では高齢化して栽培農家も減っていますが、ちょうど平成10年頃は生産者数が最も多かった時期です。

北本農場の作業場

自宅横にある北本農場の作業場。

ご家族だけで作っているのですか?

修一さん:基本的には私と妻でやっていますが、田植え、稲刈り、「加賀丸いも」の種芋の植付けと収穫の時期は、一時的にアルバイトを雇っています。「加賀丸いも」の収穫は、掘る前のツルや支柱の片付け、掘った後の「ヒゲ取り」「毛むしり」といわれる根をハサミで切り取る仕上げ作業に手がかかるんですよ。掘るのは一気にできても、この仕上げ作業は時間もかかるし、慎重さが必要なのです。

文江さん:しかも収穫後すぐに作業ができるわけではなく、表面の土を乾燥させてからでないとヒゲ取りができないんですよ。「加賀丸いも」は皮が薄くてデリケートなので、周りについた土が水分を含んだ状態で触れると、皮がむけたり、傷がついてしまうんです。数日、乾燥させてから、粗土を振り落として、全体に生えた根をハサミで切って整えていきます。

まだ土が水分を含んだ状態

まだ土が水分を含んだ状態。無理に土を落とさず、もう少し乾燥させてから作業を行う。

細かな根をハサミで切り落とす作業

表面の土を落とした後は、細かな根を1本ずつ丁寧にハサミで切り落とす。

繊細な作業なので女性が向いてそうですね。

文江さん:そうですね。傷つきやすい素材ですし、女性の方が細かな作業にも適していますね。今はベテランの方が手伝ってくれているので助かっていますが、今後は手伝いの人を確保するのも苦労しそうです。土で汚れる作業ですし、若い方は敬遠しがちで。作業の時はこんな風に完全装備、手袋も綿手袋とゴム手袋を二重にしてやっているんですよ。

手袋を二重にし、眼鏡やマスクもつけて完全防御

手袋を二重にし、眼鏡やマスクもつけて完全防御。そのおかげか、「加賀丸いも」をよく食べるおかげか、文江さんの肌はしっとりつやつやでした。

「加賀丸いも」農家さんは、ご夫婦仲がいい方が多いですね。

文江さん:協力しないとできない仕事ですからね。お嫁に来た時はやらなくていいと言われていたんですけど、今ではこうして一緒にやっています(笑)。

修一さん:釣った魚に…ってやつですね(笑)。妻には感謝しています。

文江さん:この辺でも、今は「加賀丸いも」を栽培していないけれど、おじいちゃん、お父さんが栽培していたという若い農家の中で、栽培を再開しようと考えている人もいるようです。その時、旦那さんはやる気があっても、奥さんの協力が得られるかというのがあるようです。

修一さん:奥さんの理解、女性の協力は重要ですね。

アルバイトの女性

ご近所から来てくれたアルバイトの女性。以前は「加賀丸いも」の生産農家だった人もいて、作業は手馴れたもの。そして肌がキレイな人が多いのは、気のせいでしょうか。

お子さんにも跡を継いでもらいたいと考えられていますか?

修一さん:うちは娘だし、まだ小さいので、あまり考えていないです。生産者が高齢化しているので、若い世代が継承してくれたら嬉しいですけど。

文江さん:娘は「私が跡を継ぐ」って言っていましたけどね。

北本農場さんではどのくらいの「加賀丸いも」を生産されていますか?

修一さん:以前は9反作っていて、多い時は1町2反のこともありましたが、今は5反作っています。だいたい1反で4000個を植え付けています。ただし、それが100%収穫できるわけでもないんですよ。「加賀丸いも」は、種芋1個から1個しかできないので、中にはうまく育たないものもあれば、形がよくないものもできます。昭和9年の洪水で土質が変わるまではデコボコした形の芋だったので、本来その遺伝子を持っているのでゴツゴツした芋ができることもあるんです。

かなりの量がありますが、根を切る作業はどのくらいかかるのですか?

修一さん:贈答用が中心なので、お歳暮に間に合うように12月10日頃までには全て仕上げてしまいたいですね。仕上げた芋はJAに納品すると、共同選果場で大きさや形で分類され、箱詰めされて全国へ出荷されます。

まだ根がついている状態

粗土を落としただけで、まだ根がついている状態。

丁寧に根が切り取られた状態

丁寧に根が切り取られた状態。

普段から「加賀丸いも」はよく食べますか?

修一さん:よく食べますよ。形が悪いものなど、商品にできないものは自宅で食べますからね。11月に収穫して、3月くらいまでは鍋にして食べることが多いです。冬はこの食べ方が一番ですね。

文江さん:鍋をする時は、すりおろした「加賀丸いも」をスプーンですくって汁に入れると、固まってモチモチの団子になります。お味噌汁にもいいですよ。生で食べるのが好きな方はご飯、お蕎麦にかけて召し上がられますね。「年越し蕎麦には加賀丸いも」と毎年楽しみにしてくださる方もいらっしゃいます。

「加賀丸いも」の年越しとろろ蕎麦

粘り強く、長くのびる「加賀丸いも」の年越しとろろ蕎麦は縁起もよさそう。

お歳暮は、ちょうど採れたての時期になりますね。

修一さん:旬の時期で美味しいですし、冬の料理にもよく合うので、お歳暮の贈答用に選んでくださる方も多いのだと思います。たくさんの方に旬の「加賀丸いも」を、味わっていただきたいですね。

有限会社 北本農場

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TEL:0761-55-1935
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