中谷賢史さん
〒929-0102
石川県能美市西任田町
TEL: 0761-57-1875
かがまるボイス
VOICE
生産農家(能美市)
小松市在住、生まれ育った能美市で「加賀丸いも」作りをする中谷賢史さん。
中谷さん:今年35歳で、「加賀丸いも」農家になって3年になります。生産者の中で20代、30代は4人くらいでしょうか。
中谷さん:祖父が「加賀丸いも」を作っていて、学生時代は自分も祖父の仕事を手伝っていました。「加賀丸いも」は生産者が高齢化し、それを受け継ぐ人がいなくなり、どんどん生産量も減っている。そんな状況を見て「加賀丸いもをなくしたくない」「自分が作ろう」と思ったんです。子供の頃からいつも食べていたので、自分が作っていれば、いつでも食べられると思ったのも理由の一つですね。
ただ、うちの実家は兼業農家で農地もあまりありません。祖父が農業をやっていましたが、父はずっとサラリーマンをしていました。祖父が亡くなってから父が営農組合で共同で米作りをしていて、「加賀丸いも」も栽培しています。僕は父とは別に独自で農業をやっていて、米作りはせずに農地を借りて「加賀丸いも」だけを作っています。もちろん繁忙期には親子で手伝ったりもしますけどね。
手前は今秋まで「加賀丸いも」が作られていた畑で、翌年はここで米が作られる。
中谷さん:そうですね、僕のようなやり方をしているのは珍しいです。他の方は米作農家で自分の土地で米と「加賀丸いも」を輪作しています。「加賀丸いも」を1年作ったら、次は米を栽培する。米を2〜3年栽培していた田んぼで、次の1年は「加賀丸いも」を作る。「加賀丸いも」は連作できない作物なので、毎年別の場所で栽培しないといけないのです。
自分の場合は田んぼを持っていないので、他の農家から借りて、周期に合わせて場所を変えながら「加賀丸いも」を栽培しています。それに、畝にマルチ(ビニールシート)を使っているのも他とは違うやり方です。米も作っていれば藁がありますが、僕は米を作っていませんからね。
藁の代わりにマルチを使う中谷さんの栽培方法。
中谷さん:自分の土地を持って、米も「加賀丸いも」も栽培するのは理想ですが、それにはかなりの資本投資が必要なのです。祖先から受け継いだ土地や、機材が揃った専業農家だったらいいのですが、新規就農では難しいのです。「加賀丸いも」だけであれば、トラクターなどは借りられますし、植え付け、支柱立て、収穫など、他の作業はほとんどが手作業なので、機械を持っていなくてもできるのです。今のやり方が、自分には合っていると思います。
植え付け、収穫、支柱を立てたり、抜いたりなど、「加賀丸いも」作りは手作業がしめる割合が高い。
中谷さん:白山市にある農業法人で働いていました。「加賀丸いも」を作りたいという想いから農業を志しましたが、自分には農業経験がほとんどなかったので、いきなり就農することに不安があったからです。その農業法人では「加賀丸いも」を作っていませんが、米の他にもキャベツ、白菜、ニンジン、トマト、ブロッコリーなどの野菜を作っていました。6年間そこで働きながら、農業の基本を学び経験が積めました。
中谷さん:基本的には妻と2人でやっています。繁忙期は人に来てもらって、今も収穫後の「ヒゲ取り」という根を切って仕上げる作業をしてもらっています。面積としては1町ほど作っています。
「ヒゲ取り」と呼ばれる仕上げ作業には、細やかな女性の手仕事が欠かせない。
中谷さん:そうかもしれません。夫婦で協力しないとやっていけないので、仲がよくないと。仲がいいからできるのか、仲がよくないとできないのか、とにかく「加賀丸いも」農家にとって奥さんの理解と協力はすごく大事です。
納屋で作業中の奥さんとパートの皆さん。
中谷さん:とてもやりがいを感じています。少しでも「加賀丸いも」の継承に貢献できたらと思いますし、自分なりのやり方も形ができてきたので。
自分が「加賀丸いも」を作り始めてから、4軒の農家が栽培をやめています。作り手が高齢化していることが問題なのではなく、後継者がいないのが問題なのだと感じています。息子が継いでくれるなら、まだ続けられたという人もいたと思います。機械化しにくい作物なので、年をとると若い人の助けが必要だったりします。「加賀丸いも」作りは大変ですが、それだけやりがいも、作りがいもある作物です。祖父が作っていたという世代から後継者が出たり、新しくやってみようという新規就農の人が増えたらいいなと思います。
「すりおろしたものなら、生でも加熱したものでも何でも好き」という「加賀丸いも」が好物の中谷さん。「ちょっと贅沢だけど、フライドポテトもホクホクで美味しいですよ」とのこと。